【ヴァリウスの詳細な紹介】

ヴァリウスが故国を捨て、ザナンへ入った経緯は語られていないが、
ヴィンデールを憎んでいた事は確かであるという。

彼は、長命で博識であるエレアの内でも、その知識を持つ者は非常に限られる、
レム・イドにおける森の真実を知っていた一人である。
レム・イドの協調世界文明に心酔しており、その理想郷を完全なものとして再現するために、
無辜の民である同胞を犠牲にする道を選んだ。
レム・イドの崩壊の原因は、異端者による利己的な精神と腐敗であった、
かの協調世界の掲げた「友愛」という脆弱な基盤ではなく、「人類の存亡」という強固な基盤であれば
完璧な共同体が完成する。と信じ、世界を人類各々自らの手で破壊し、自省し、再生を経験させる事で
自己愛や金銭による腐敗を排除出来る、と考えたのだ。

そのための生贄の子羊は純粋無垢、穢れの無いものであった方がより効果的である。
私的に憎しみを抱く祖国、ヴィンデールを贄に選んだのも自然な流れであった。

ザナン王家に信頼を得ていたヴァリウスは、第二皇子サイモアの、森とエレアに対する熱意に心を動かされる。
両親から疎まれ、権力を持たない、脆弱な白子の皇子が、自身の計画に役立つとは考えていなかったが、
ヴィンデール、ザナンにおいて異端である自身を重ね、かすかな共感を抱いていた事もあり、
真実を心に留めておきながらも、子供の研究に助力していた。

その皇子が心的外傷により精神を混乱させ、長兄を殺し、
権力を手に入れながらも自棄となった時、ヴァリウスは千載一遇の好機を得たのである。
サイモアにとって、兄と父両方の役割を果たしていたも同然の彼が、
皇子の心のままに、また自分の計画を推し進めるために、ザナンの政治・軍事を掌握する事は容易い事であっただろう。
長兄クライン皇子が実は存命であり、弟皇子とヴァリウスを恐れ、ジューアの地へ亡命した事も把握していたが、
厳重に行動を見張らせるに留め、サイモアに伝えずにおいたのは、
兄皇子生存によっての、サイモアの心変わりを危惧しての事だろう。
兄弟の成長を見届けてきたヴァリウスとしても、暗殺するには忍びなかったのかもしれない。

計画は順調に進行し、障害となっていたパルミアにて
ダルフィの支配者となっていたクラインを利用、牽制する事にも成功し、パルミア王を謀殺。
エレアへのプロパガンダは完全な成功を収め、
パルミア、エウダーナ、そして森周辺の、イェルスを除く、各国合同軍により、異形の森の抹殺は決議された。
サイモアの研究所にて森の使者らを足止めさせ、いよいよヴィンデール掃討が迫ったある日、
サイモアから、ザナン軍の全権を託される。そして、サイモアは王宮から消えた。

ヴィンデールの森を掃討し、増幅するメシェーラによってイルヴァが荒れ果てた時、
いよいよ理想郷の創立となった。
全てを世界に明かし、ヴィンデールに代わる希望の地「ロスリア」を建てたのだ。

我が理想を人々に説き、巡礼者を受け入れ、森を拡大させて行ったが、変化は余りに早く訪れた。
ロスリアに集まる膨大な富と利権に、人々は狂い、政治は腐敗していった。
たった三年の月日のうち、瞬く間に、レム・イドの理想社会の体現であったはずのロスリアは、
ヴァリウスの忌避する異端者、ユタスの唾棄すべき精神を現したのであった。

未だ、ロスリアのエーテルだけでは、世界は滅びへ向かいつつある。
「人類の存亡」を盾にレム・イドの文明を再生させるというヴァリウスの計画は、
脆くも崩れ去ろうとしている。

  • 最終更新:2012-04-24 11:08:44

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