会話集『前編』

メインクエストイベント全集〔前編〕   会話集『後編』
メインクエストイベント全文・会話集前編です。
完全なスポイラーとなっており、ゲームの楽しみを損なう可能性もございますので、
十分御留意下さい。


オープニング


今はもう忘れ去られた昔
イルヴァの地に十の文明の残骸が埋もれ
レム・イドの傷跡が癒えぬまま迎えた十一紀、
最も多くを破壊し生み出したと語られる時代
シエラ・テールの物語。

ひと月の雨が降り終えた後
辺境の地カルーンの森が姿を変えた。
奇妙な光の霧に覆われた森は急速に根を広げ
人の住めない生態を作り出した。
 
東の大陸、ヴィンデールの森から始まったこの異変は
すぐにカルーンの民の生きる土地を奪い
多くの難民がノースティリスに流れ込んだ。
 
西方国の皇子は、この現象をレム・イドの災厄であると説き
異形の森とその民の根絶を唱えた。
 
ヴィンデールの民エレアは、やがて憎しみを避けるように
人間の土地から離れていったが、対立の溝はうまらず
掃討戦は、今にも始まろうとしていた。



まもなく夜の明ける頃だった。
ノースティリスに向かう商船クイーン・セドナの
貨物にまぎれ込み眠っていたあなたは
突然、悲鳴のような轟音に起こされた。
 
木材の裂ける音、船体をゆさぶる波の振動
帆を食い千切る風の唸り
まるで悪魔がもたらしたような突風の中で
年老いた水夫が神を呪って呟いた。
 
「エーテルの風だ」
 
…そして、船が二度目の悲鳴をあげた。
波の重壁が何もかもを押しつぶし、人々が祈る間もなく
クイーン・セドナは夜の海にのまれていった。


二人のエレア


(あなたは意識をとりもどした)


ロミアス「…意識が…もう戻ったのか? 驚いたな。
君の回復を待つために、我々の急を要する旅がいつまで中断されるのか、気を揉んでいたのだが。」

ロミアス「君は重傷を負い川辺に倒れていた。
宵闇が辺りを覆う前に、癒し手の力を持つ我々に発見されたのは、全くよくできた偶然だ。」

ロミアス「…そんな物珍しげな顔をするな。君の察する通り、我々は異形の森の民だ。
エレアは…シエラ・テールの高潔なる異端者は、他種族の詮索に付き合う無駄な時間を
あいにく持ち合わせていないが、君は、我々に拾われた幸運をもっと素直に喜ぶべきだな。
瀕死の君を回復させることは、ここにいるラーネイレ以外の何者にも不可能だっただろう。
なにせ彼女はエレアの…」

ラーネイレ「ロミアス、喋りすぎよ。たとえ意識の朦朧とした怪我人が相手だとしても。」

ロミアス「…そうだな。私の悪い癖だ、わかってはいる。…さて、’プレイヤー’といったな、

見たところ君はノースティリスの人間ではないようだ。
余計な世話でなければ、我々が旅を再開する前に、
この土地での生活の知恵を授ける程度の時間は割けるのだが。」


PC「余計な世話だ」(会話中断)
PC「チュートリアルを開始する」

ロミアス「…賢明な判断だな。まずは最も基本的な動作から教えよう。

移動方法はもうわかっているだろうが、もしカーソルキーを使っているのならば、
できるだけテンキーでの移動に変えたほうがいいだろう。
テンキーの周りには、床のアイテムを取得する0キー、その場で足踏みする5キー、
そして射撃などのターゲットを指定できる*キーがあるからな。

全ての行動はz,x,cの三つのキーから選択できる。
zキーでは主に魔法やスキルなどの動作、xキーではアイテムの操作、
cキーでは能力の確認や装備の変更ができるぞ。

まずはxキーを使って、最も基本的で重要な行動である食事をしてみよう。
注意しておけ、空腹になると体力の回復速度が下がり、
餓死寸前になると当然体力は減って行くからな。
食料は店で買ったり、栽培したり、たまに敵が残す死体を食べることもできる。

君の足元に食料を置いた。
xキーを押して、テンキーを使い「食べる」のメニューに移動して、足元のものを選択するんだ。」


(乞食の肉が落ちている)
PC「わかった」(会話中断)
PC「食べた」


ロミアス「…本当に食べてしまったのか?」

PC「えー」

ロミアス「…食料以外のアイテムも、同様にxキーで操作することになる。
例えば巻物や魔法書は「読む」のメニューから、杖は「振る」のメニューから使用できる。

次はzキーでの行動について説明しよう。

zキーでは、魔法やスキルを使用したり、体当たりや採掘など、やや特殊な行動を行うことができる。
体当たりは、鍵のかかったドアを壊したり、果実を木から落としたい時に実行するといい。

zキーの他にも、スペースキーの活用法を覚えておこう。
スペースキーは、足元にあるものに応じて自動的に行動を選択してくれるキーだ。
例えば足元に階段があれば昇り降りを、宝箱があれば「開く」を、
祭壇があれば「捧げる」をなど、自動的に選択してくれる便利なキーだ。

そうだな… 「穴掘り」実際に試してみようか。
穴掘りは、道を短縮したり、鉱石を採掘したり、家のレイアウトを変える時に使う。
とりあえず適当な壁の前に立ち、zキーを押して穴を掘ってみてくれ。」

PC「わかった」
      
ロミアス「…どうやら何かを掘り当てたようだな。

多くのアイテムは、その本当の価値を知るためには「鑑定」をする必要がある。
街にいる鑑定者に頼んだり、鑑定の巻物や、魔法を唱えることで鑑定はできる。
未鑑定の品は店での売価が低くなり、中には呪われた装備、
危険な効果のポーションや巻物もあるので注意が必要だ。

武器や防具は、長い間所持していると簡単な鑑定がされるが、
装備の持つ魔力や本当の性能を知るためには、やはり鑑定が必要だ。
強力な力を秘めたアイテムの中には、上位の鑑定を必要とするものもあるので、
未判明のまま店に売ってしまうことは賢明ではないだろう。

では、今足元に置いた鑑定の巻物をxキーで読み、その金塊を鑑定してみるんだ。」


PC「結果は想像がつくが、やってみるか…」(会話中断)
PC「鑑定した。」

(…ロミアスはにやりと笑った。どうやら、この偽物の金塊は彼がいつの間にか埋めたらしい…)


ロミアス「…次は戦闘について教えるが、戦う前にまずアイテムを装備し、
準備を整えなければならない。使い古しだが、君のために弓と矢を用意した。
射撃武器のほとんどは、例えば銃なら弾丸のように、対応した矢・弾を装備する必要がある。

アイテムを装備するには、cキーから装備画面を呼び出せばいい。
呪われたアイテムを装備してしまうと、装備が外せなくなるだけではなく、
様々な悪い効果が発生する。
その弓も呪われているので、解呪の巻物で呪いをといてくれ。」


PC「わかった」(会話中断)
PC「装備も解呪も終わった」


ロミアス「…よし、いよいよ戦闘の説明だ。
相手を打撃で攻撃するには、単に相手の方向のキーを押すだけだ。
射撃も、zキーから射撃を選択するだけで、一番近くの敵を自動的に攻撃する。
攻撃する敵を予め指定したいときは*キーを押せばいい。

では、訓練用のモンスターを召喚するぞ。
可能なら、使い勝手を知るために射撃で倒してみてくれ。
ただし、弓は近接して打っても威力が低いので注意が必要だ。
危なくなった時のために、治療薬を足元に置いておこう…必要ないとは思うが。
ポーションの飲み方はわかるな?…そう、xキーだ。」

ロミアスは隠し持っていたプチを放った。


ロミアス「…どうした? まだ全てのプチを倒していないぞ。」

ロミアス「…上出来だ。

…ノースティリスの地理について少し説明しよう。
シエラ・テールには幾多の国が存在するが、ノースティリスはどの国の支配も受けておらず、
《ネフィア》と呼ばれる迷宮群が存在する特殊な場所だ。
この地では、地殻変動とともに新しい迷宮がしばしば生成される。

迷宮の主を倒すと貴重な物資や財宝が手に入るため、冒険者にとっては
格好の収入源になるわけだ。迷宮に辿り着くと、その場所の危険度が表示される。
危険度が自分のレベルより高い場所を探索することは、まず避けたほうがいいだろう。

迷宮に落ちている宝箱の開け方を知っておく必要があるな。
足元に宝箱を置くので、xキー、またはスペースキーで開けてみるんだ。

鍵が掛かっているだろう?宝箱の鍵は、ロックピックを所持していて、
鍵開けの技術が開錠に必要な値に達していないと、解除することはできない。
君の技量では、おそらくその宝箱を開けることはできないな。
宝箱はダンジョンに落ちていることもあるが、生憎と重い代物なので、
開けられない時は諦めるしかないだろう。
気をつけろ…宝箱に押しつぶされて無様な死をさらした冒険者を、私は何度となく見てきている。

宝箱に限らず、荷物を持ちすぎると速度にペナルティが課せられるため注意が必要だな。
必要のないアイテムは、家に保管しておくといい。

最後に、家について説明しておこう。家はアイテムを保管したり、安全に魔法を学んだり、
また単に装飾して楽しむために利用できる。
家の権利書を購入できるようになれば、ノースティリスの好きな場所に家を建てることができるだろう。
ただし、家は一つしか持てない。

家の中にあるハウスボードを使うことで、壁を作ったり、床の模様を変えたり、
滞在者を募ったりできるぞ。後で試してみるといい。

よくやった。これでノースティリスで生活するための、基本的な知識は身に付いたわけだ。
自分の状態を把握し、慎重に行動すれば、瀕死の状態を高慢なエレアに拾われ、
講釈をたれられることも、もうないだろう
(ロミアスはニヤリと笑った)。」

ロミアス「…まだ目的が定まっていないのなら、南のヴェルニースを訪れるといい。
ネフィアの迷宮群を巡るのも、貴重な経験になるだろう。
この世界で何を見て、如何な足跡を残すか決めるのは、君自身だ。」




ラーネイレ「無事に意識が戻ってよかったわ。
あなたを最初に見たときは、もう手遅れかと思ったほどだもの。」

【旅の目的】
ラーネイレ「私達はヴィンデールの森からの使者。
公正なるジャビ王と会見し、森とエレアの民に降りかかる嫌疑を晴らすために、
王都パルミアに向かっているの。」

【獣に変えられた王子の童話】

ラーネイレ「あなたは、こんな話を聞いたことがあるかしら。

あるところに、魔法によって醜い獣のような姿に変えられた 王子がいた…
彼は自分の姿に絶望し、国を捨て森の中の小屋で暮らしたの。
ある日、狼に襲われ傷ついた女が、小屋に駆け込み倒れこんだ。
王子は迷いながらも女を介抱した。彼女はもちろん男の姿におびえて泣いたわ。
でも、何日もたち彼女は男の優しさに気付いた。彼の誠実さに、抱える葛藤に、心を打たれたの。
怪我の癒えた女は、男のささえとなり共に暮らすことを決心した。
二人は様々な困難を力を合わせ乗り越えて、最後には王子にかけられた呪いがとけ、
二人が結婚して幸せな結末を迎えるの。
どこにでもある物語ね。

わたしは、小さい頃聞かされたこのおとぎ話が、どうしても好きになれなかった。
きっと、醜い姿の男に対する愛が、どこかに置き去りにされた気がしたのね。」

【ノースティリスについて】
ラーネイレ「アセリア大陸から大洋を隔たち、ティリス大陸の北に位置するのがノースティリスよ。
自由と平和の国パルミアの統治の下、古代の遺跡群ネフィアを巡り、多くの旅人や商人がこの地を訪れるの。
あなたも、そんな旅人の一人かしら?

目的が決まっていないのなら、南の炭鉱街ヴェルニースに行くといいわ。
あなたの探しているものが、見つかるかもしれない。」



ロミアス「…まだ、何か用があるのか?」

PC「なんでもない」(会話中断)
PC「出て行って欲しい」

(ラーネイレが死んでいる場合)
ロミアス「…ラーネイレ…? どこにいったんだ? まさか貴様!」
(ロミアス敵対)


(ラーネイレ存在)
ラーネイレ「’プレイヤー’の言うとおり、私達に残されている時間は少ないわ。
こうしている間にも、新王国のかの者の計画は着実に進んでいる… 出発しよう、ロミアス。」

  ((noa氏補足)誤「新王国のかの者」正「ザナンの皇子」エーテルウィンドの設定の名残。
    台詞も変えたほうがストーリー的に矛盾しない。
    その時点でラーネイレたちは、サイモア達についてはほとんど知らなかった。
    謎の討手の存在のみ。)

ロミアス「…ああ、わかった。パルミアまでは長い旅路だ。
一時であれ休息をとれて良かったのかも知れないな。」

ラーネイレ「また巡り会う時まで、’プレイヤー’、あなたに風の加護のあらんことを。」


二人は荷物をまとめ洞窟を後にした。




ザナンの皇子『サイモア』(1)


(プレイヤーが初めてヴェルニースへ足を踏み入れる)

ヴェルニースに入ろうとしたあなたを
ザナンの紋章をつけた兵士が呼び止めた。
 
入念な尋問の後、あなたの怪訝な目に気付いた兵士は
ザナンの皇子が遊説に来ているのだと答えた。
 
街の広場には人だかりができ、
供の腕に弱々しくもたれた白子の皇子の言葉に
皆が耳を傾けていた。


サイモア「…そして深い悲しみが 私を襲う。ザナンが新王国との戦に敗れ、指導者を失った大陸が
二大国間の戦火の舞台となり、幾多の歳月が過ぎよう。
今は亡きクライン皇子のあとを継ぎ和平に模索しても、二国の対立の溝はうまらず、
未だ緊張の糸は張り詰められたままだ。

戦争…シエラ・テールを襲うかつてない危機に、血と炎に身を染めた国々は気付かないのだろうか?
災いの風が我らの森をむしばみ、今この時にも多くの同胞が命を落とし、その土地を奪われているというのに。
異形の森と 異端の民エレアが、レム・イドの悪夢の残骸《メシェーラ》を呼び覚まそうとしているのに。

イルヴァに遣わされた大いなる試練は、同時に結束の機会である。
もし我々が互いに争うことをやめ、他者を理解することを学び、共に手をとり立ち向かうならば、
腐った森と異端児をこの地から一掃し、災厄に打ち勝つことも可能なのだ。

今日のザナンに大国を動かすかつての影響力はない。
然るに、私が成せる事は、諸君に知ってもらうだけだ。二大国に迎合せず確固たる地位を築いたパルミア、
そしてその忠実な民の決意こそが、シエラ・テールの希望であるということを。」



一際大きな喝采が広場に響いた。
 
演説はもはや喧騒にのまれ
最後列のあなたの元までは届かなかった。
 
白子の皇子に対する妙な不安と興味を覚えながら
あなたはゆっくりと広場を後にした。


ヴェルニース


(プレイヤーが場面を切り替える)

同刻 - ヴェルニースの酒場 -


粗忽なザナンの下級兵士が交わす杯の音で
ヴェルニースの酒場は久々の活気を取り戻していた。
 
酒に酔い力をもてあました若い兵士が
一人のみすぼらしい男に因縁をつけ
時々、威嚇するような大声をあげ拳をふるう。
 
部下の騒ぎに気づいた赤髪の仕官は
溢れんばかりのクリムエールの杯を乾すと
静かに席を立った。


ロイター「何事だ?」

兵士「これは隊長。なに、たいした騒ぎではありません。このボロ布をまとった不振な男を
尋問していただけのことで。なにしろ皇子直々のご遊説、警護を申しつかった我々としては、
例え酒に興じている最中でも、怪しいものを見過ごすわけにはいきませんからな!
…おい、お前のことだぞ。聞こえているのか?」

みすぼらしい男「…」


ロイター「この男は…」

兵士」ご覧のとおり、ふてぶてしい野郎です。もう少し痛い目に合わせて追い返して見せましょう。
危害はないにせよ、目に付くだけで我らの飲む酒がまずくなりますからな。」

ロイター「やめておけ。」

兵士「しかしね、隊長、脚の一本でも折れていたほうが、むしろ物乞いに箔が付くってもんです。」

ロイター「誰のために言ったと思っている?
ザナンの白き鷹、それがお前の目の前にいる男だ。…しばし二人だけにさせてもらう。」



ロイター「こんな所に骨を埋めていたとはな。そのなりはなんだ、世捨て人にでもなったつもりか。」

ザナンの白き鷹「…」




ロイター「人は変わるものだ。国中の誰もがその才能を羨み、功績を讃え、
貴族の特権まで与えられた白き鷹が、小汚い酒場の隅に隠れ、死人の目で空を見つめている。
貴様がザナンを出てからは、何事も張り合う相手がいなくて困る。」

ザナンの白き鷹「…」



ロイター「ふっ、憎まれ口の一つでも叩いたらどうだ。
仮の自分にうんざりだと、昔俺に言ったのを覚えているか。

富と名声を脱ぎ捨てた、その薄汚い乞食のような姿がありのままの姿だと吹くのなら、
とんだ笑い種だ。あるいは、欲望を捨て、罪人のように暮らすことがあの娘の供養になるとでも?」

ザナンの白き鷹「その話は聞きたくない。」

ロイター「エレアの小娘…エリシェといったな、
貴様の言葉を借りれば、あの娘さえも己の仮面の一部だったのではないか?」

ザナンの白き鷹「問答に付き合うつもりはない。あのまま殴られ牢に入っていたほうが、まだ静かでいい。」

ロイター「では、望みどおり身柄を拘束させてもらおう、
ヴェセル・ランフォード。ザナンを出た貴様以上の危険分子は他に居まい。」


ザナンの皇子『サイモア』(2)


(プレイヤーが場面を切り替える)

同刻 -ザナンの皇子宿営-


伝令兵「サイモア様、酒場で不審な男を捕らえたとの報告です。
三年前に失踪した《白き鷹》であると、ロイター様はおっしゃられるのですが。」

サイモア「確かなのか?」

伝令兵「ハ、それが…確かに昔の面影はあるのですが、風貌も変わり、尋問をしても一言も喋りません。
私には別人のように思えますが、ロイター様がおっしゃられるのであれば間違いないかと。」

サイモア「変わったか。ふふ…そうだろう、昔のままでいられるわけがない。
あの者は捨て置け。手を出してはならぬ。」

伝令兵「御意。」



サイモア「皮肉なものだ。ザナンを出て以来行方を捜させていたが、今になって見つかるなんて。」

ヴァリウス「ザナンの白き鷹…今更あの男に何を期待しておいでで?」

サイモア「期待などしていない。ただ生きて、これから起こる喜劇の証人になってくれればいい。
あの男がいないと、私の物語は完結しないのだから。」

レシマスにて


(プレイヤーがレシマス3層のスランと話す)

スラン「…そこの御人…頼みが…頼みがある…
私はパルミアの斥候…王の命令でレシマスに潜んでいた者だ…
詳しく説明する体力は…私には…もう残っていない…ジャビ王にこの書簡を…届けて頂きたい…
二つの大国の衝突を…シエラ・テールの…危機を…防ぐために…"

…う、うぅ…貴方を…信じる以外にもう希望はない…
私の所持品は…自由にして構わない…どうか、この知らせを…パルミアに…」

ジャビ王への書簡を受け取った。
      
男は静かに息絶えた…


      

パルミア王宮


(プレイヤーがパルミアへ入る)


同刻 - パルミア 王の間 -


ジャビ王「よくぞ参った、ラーネイレよ。あの小さかった腕白娘が立派に成長したものよ。
この時勢、そなたの立場では楽な旅路ではなかったろう。」

ラーネイレ「お久しぶりです、陛下。
われら異国の民でさえ、このように傷一つなく王都に辿り着けたのは、ひとえに陛下の御威光の賜物。
異形の森の使いとして参じたのも、今一度エレアの民とシエラ・テールのために、
その御力を貸して頂けないかとの願いからです。」

ジャビ王「…ラーネイレよ、残念だがその期待には応えられぬ。
エレアの民にふりかかる災難については、わしも心を痛めておる。
しかし、そなたも知っておろう、イェルスとエウダーナの肉薄した力関係と、
その天秤のバランスを保つパルミアの役割を。

多くの国と人間がザナンの皇子に賛同し、互いに突きつけた矛先をはじめて
異形の森という共通の敵へ翻そうとしている今、パルミアが声高く異を唱えれば、
ザナンはおろか、二大国さえも我が国を反逆児として扱うだろう。
そしてパルミアの衰退は、歯止めを失った大国同士の戦争に繋がるのだ。
シエラ・テールを、再び戦火と憎しみの炎にさらすわけにはゆかぬ。」
      
ラーネイレ「…では、二つの大国のために、エレアは犠牲になれと仰せられるのですか。
罪無き異邦の民の血により築かれた、ひと時の脆い平和のために。
弱者に手を差し伸べる寛大な心は、この大陸にはもう存在しないのですか?」

ヴァリウス「…罪がないとは、心外な。
あなた方の異形の森が、そしてエーテルの風がわれ等にもたらした損害を、
まさか知らぬわけでもありますまい?」

ラーネイレ「いらしたのですか、ヴァリウス閣下。
確かに、エーテルの風により森に異変が起きているのは事実。
しかし、シエラ・テールの有史以来、何事もなく共存してきたヴィンデールの森が、
今になってなぜエーテルの風を呼び起こしているのか、その原因を調べずにして糾弾するとは、
異質なものに対する偏頗ではないでしょうか。

森の異変も、エーテルの風も、かの災厄とは違う現象です。陛下、よくお聞きください。
もしザナンの皇子の主張が間違っているとしたら…」

ジャビ王「それ以上申すな、ラーネイレ。」

陛下、しかし真実は…」

ジャビ王「やめるのだ。続きは明日聞くことにしよう。今日の宿はわしが手配させる。
今は…話をする時ではないのだ。わかってくれ。」



ラーネイレ「陛下…わかりました。しかし明日また参ります。陛下の決断が最後の希望です。」





サイモア「最後の希望とは恐れ入る。…まさか、あの娘の戯言を信じてはおりますまい、ジャビ王。」

「私は、幼い頃から災厄の研究を進めてきたのだ。《メシェーラ》は、またの名を星を食らう巨人と言う。
大地を蝕み、不浄の根を広げる異形の森こそ、まさにそれではないか。
たとえ娘が言ったように、災厄とは違った現象だとしても、
我らの土地を奪い、醜い怪物を生み出す事実は変わらぬ。
ジャビ王、あの娘は私に預けるのが賢明だぞ。」

ジャビ王「ふん、ラーネイレが真実を握っているからか?」

サイモア「私の見解こそ真実だ。あの娘に対する関心は別にある。
それに王よ、ザナンあってのパルミアであることを、お忘れではないかな?」

ジャビ王「ラーネイレは大事な客人。ザナンの皇子の頼みでも聞けぬ。
パルミアはヴィンデールの森に関与しない、
それで十分ではないか。失礼させてもらう。やるべきことがあるのでな。」




サイモア「…ふふ、逃げてしまったよ。それにしても驚いた。あの娘、そっくりではないか。」

ヴァリウス「白き鷹に続きラーネイレとかいう娘。ようやく、運命の歯車が回り始めたのでしょう。」

サイモア「運命など今更信じる気にもならないが、舞台が予想以上に賑やかになったことは歓迎すべきだ。
あの二人には、相応の役柄を用意しておいてくれ。君の手腕を信頼しているよ、青い髪のヴァリウス。」

ヴァリウス「…」



謁見


ジャビ王「斥候からの知らせを預かっていると?…よかろう、その者の書簡をわしの手元へ。」

…なるほど、恐れていたことが現実になったというわけだな。
知らせにあるよう、悪しき者がレシマスに眠る秘法を狙うのであれば、
パルミアの王の名誉にかけてそれを阻止せねばなるまい…
’プレイヤー’とやら、大儀であった。直ちに謝礼を用意させようではないか。」

ジャビ王「今の時勢、信頼に足る者の剣を遊ばせておくのは惜しい。
もしパルミアの元で働く意志があるのなら、城の図書室にいるエリステアを訪ねるがよい。
十分な報酬と名誉を約束しよう。」

ジャビ王「汝の活躍を楽しみにしておるぞ。」


エリステア「あなたが’プレイヤー’ですね。使いの者から聞いています。
私はエリステア、ネフィア迷宮群の歴史の研究に携わって来ました。
今は王の命によりレシマス調査隊の副長を務めていますが、
洞窟に眠る多くの謎と危険な魔物の存在のために、調査は思わしく進んでいません。
あなたのような冒険者に力になってもらえると心強いです。」


断る
エリステア「わかりました。考えが変わったら、また声をかけてください。」

力になる
エリステア「よかった。こんなことを言っては悪いけれど、城の兵士達は機転に欠けていて、
調査にはあまり役に立ってくれなかったの。」

エリステア「私達の目的は、レシマスを探索し、
最下層にあるといわれる《秘法》を持ち帰ることです。
《秘法》の正体とレシマスについての研究はある程度進んでいます。
一度に言っても覚えられないでしょうから、必要があればその度に聞いてください。

最初の仕事として、あなたにはある人物の探索をお願いします。男の名は《カラム》。
あなたと同じように、彼もレシマス探索の協力を買って出た屈指の冒険者です。
調査隊の情報源として少なからぬ貢献をしていました。
しかし、彼からの音沙汰がここ数週間まったくないのです。

あなたの任務は、レシマスに赴き、《カラム》との接触を試みることです。
彼から最後に連絡があったのは、レシマスの16階。
おそらくは、より深層に探索の手を広げているでしょう。
彼の足取りをつかみ、私に報告してください。」

レシマス4階の鍵を受け取った。


      
スターシャ「パルミアは歴史ある自由と文化の国。
大アセリア大陸の戦乱から離れ、静かに育ってきた国です。
王制政治が廃止された今でも、この平和を培った代々の王と夫であるジャビ王に、
民は忠誠を尽くしてくれています。」


パルミアの酒場


ロミアス「リアナという女を探している。心当たりはないか?」

女「…その女に何の用?」

ロミアス「腕の立つ者で、金次第でどんな依頼も受けるとだけ聞いている。
護衛を雇う理由などないのだが、王の使いより通達があってな。」

女「金次第でどんな依頼も受ける、か…ふふ。確かに腕は立つし、どんな危険なヤマであろうと関係ない。
ただし、あの男の場合はね、金次第じゃなくて気分次第なのよ。
ええ、あたしがリアナよ。二人とも、付いて来なさい。」




リアナ「ヴェセル、ひさしぶりの仕事よ、ぅ…げほっ、げほっ。」

リアナ「あなた、食事もろくにとらず、またクラムベリーの煙を吸っていたのね。
あたしの可愛そうなヴェセル…さあ、起き上がって依頼人に挨拶するのよ。」

ロミアス「素晴らしい。我々の頼る剣の主は、薬漬けで意識の朦朧とした病人か。
ラーネイレ、どうやら無駄足だったようだ。
この男がかつてどのような腕を誇っていたかは知らないが、療養に付き合ってる時間はない。」

リアナ「まぁまぁ…そう急かさないで。ヴェセル、気にしないでいいのよ。
あなたがどんなに惨めでひどい目にあってきたのか、この人たちは知らないの。
あたしは、あなたの悲しそうな瞳を一目見て、すぐに直感したわ。
この人は計り知れない苦悩を抱え、断ち切れない過去を引きずった可愛そうな人だって。
そして、あたしが付いていれば、きっと全てを乗り越えて一人前の男になれるって。
でもね…そろそろ仕事をしないと、食べる物もないのよ!」

ヴェセル「君と飢え死にするのも悪くない。」

リアナ「いやぁん、ヴェセルぅ!!」

ヴェセル「ふふ、リアナ。君にまであの世に付き添ってもらうつもりはない。さて依頼を…」


ヴェセル「…貴女は…エリシェ…?」

ラーネイレ「エリシェ?」

ヴェセル「いや、気にしないでくれ。依頼を聞こう。」

ロミアス「その必要はない。薬漬けの男に護衛を頼めなどという命令は、
パルミア流の性質の悪い冗談だと受け取っておこう。
もともと、身を狙われる覚えなど私達にはないのだから。」

ヴェセル「…護衛とは気軽に言ってくれる。もし私の感覚が薬で鈍っているのでなければ、
この家を取り囲んでいる気配の数は、一介の者の護衛の範囲を遥かに超えている。」

ラーネイレ「囲まれている?私達を狙っている者がいるというのですか?」

ヴェセル「それはこちらが聞きたい質問だが、どうやら話をしている暇はないようだ。
私の背を見失わないように。裏路地から街を出る。」


ダルフィ宮殿


セビリス「ジャビ王の客人とは、その娘か。」

ラーネイレ「…はい、ラーネイレと申します。」

ロミアス「ダルフィの冷酷なる影、セビリス公。
有事には公を頼れとの王からの言伝を思い出し、頼らせてもらった。
我々を狙う者の素性はわからないが、裏の世界で生きる貴公ならば足がかりをつかめるのではないか?」

セビリス「なるほど、私を頼ってきたのは正解だ。君達を狙っているのはザナン…サイモアだろう。
ふっ、部下に探らせるまでもない。一目でわかった、その娘の顔、そして白き鷹を目にして。
ヴェセル・ランフォード、久しくみないうちに随分と変わったものだ。
何故まだ未練たらしく生きている?」

ヴェセル「生きるために理由が必要だと思ったことなどない。
それにセビリス公、失礼だが私はあなたと会った記憶もないと思う。」

セビリス「ふ、この顔では無理もない。変わったのはお互い様ということか。
さて、君達の今後についてだが…」



セビリスの部下「セビリス様、ヴァリウス様がまだかと催促していますが。」


ロミアス「…ヴァリウスだと?」

セビリス「すまぬな、先客があって聞いての通りだ。
ラーネイレとやら、パルミアからの長旅で疲れているだろうが、同行してもらう。
選択の余地があるとは思うな。この宮殿の周りは既に固めてある。」

ラーネイレ「私をザナンに引き渡すのね。あなたはジャビ王の信頼を裏切るのですか?」

セビリス「…安心しろ、サイモアが君を傷つけることはない。君の仲間にも危害は加えない。」

ヴェセル「セビリス公、後悔するぞ。敵に回るというなら覚悟しておくがいい。私は執念深い性質だ。」



セビリス「これでよいのだろう?」

ヴァリウス「ええ、ご協力に感謝します。」

セビリス「相変わらずやり方が汚い、ヴァリウス。約束の方は守ってくれるのだな?」

ヴァリウス「安心なさい。あなたの部下達は丁重に扱っています。夜明けまでには送り届けましょう。
…そうそう、あなたが生きていることも、あの方には黙っておきますよ。
知られては何かと不都合でしょう?」

セビリス「…好きにするがいいさ。」



ザナンの皇子宿営


サイモア「そう硬く構えなくともよい、エレアの娘。危害を加えるつもりなどない。
私は、ただ話す相手が欲しかったんだよ。私のことを知ってもらえる相手がね。」

ラーネイレ「話し相手ですって?私はあなたと理解し合えるとは期待していません。
あなたは世論を巧みに操り、ヴィンデールの森を貶めようとしている。
しかし、森の異変とエーテルの風がかの災厄だという確たる証拠なしに、
エレアの民があなたの説を信じることはないでしょう。」

サイモア「信じる必要はない。私の説は虚言だ。ヴィンデールの森は災厄であるどころか、
メシェーラの復活を感じとり、エーテルと呼ばれる抗体を代謝しているのだ。」

ラーネイレ「…どういうことですか。」

サイモア「ふふ、興味が湧いてきたかな?
だが、森の真実を知る前に、お前には私の物語を辛抱して聞いてもらう義務がある。」

ラーネイレ「…」




サイモア「もう随分昔の話だ。ザナンには二人の皇子がいた。
脆弱で醜い白子の少年と、美しく生気に満ちた少年の兄のクライン。
少年の名は言うまでもあるまい。二人は光と影のように対照的だった。
人を魅了し、才に長け、戦を好むクラインを生まれながらの勝利者とするなら、
少年は兄の影に燻る敗者だった。

少年は兄とは違い、争いを軽蔑し詩や歌を愛した。
平和を愛し、戦災孤児や恵まれない人間への援助に奔走した、
中でも彼が興味を抱いたのは、迫害され、異端視されていたエレアとその森についてだった。
クラインが狩りや社交に興じる間、少年は森の研究に没頭した。希望は無知から生まれるのだ。
自らの不完全な存在と異形の森とを重ねて見ていたのだろう。
森に降りかかる嫌疑と偏見を拭い去り、共存の道を探ることで、世界が変わると信じていた…

研究は遅々として進まぬまま、年月は過ぎていった。ふふ、だが少年は大人になれなかった。
受け入れることができなかったんだ、強き者が支配し、不公平で不誠実な世界を。
彼は白子に生まれた生を呪い、力に満ちた兄の生を恨み、決して自分に振り向くことのない世界を憎んだ。
…天使と出会ったのはそんな時期だ。

彼女はエレアで、少年と同じぐらいの年頃だった。一目見たときから、少年は惹きつけられた。
栗色の透き通る瞳は強く、優しく、まるで全てをあるがままに肯定するかのように慈悲に溢れていた。
そして、エレアにとって住み易いとは言えないザナンで懸命に生きようとする姿に、
またもや自身を重ねていたのだ。

彼女は少年にとって…いや、この話はもう…
ただ、彼女が少年の心に傷を残して去っていったとだけ知っておいてもらいたい。
未だに私の胸を苦しめるんだよ、あの頃の思い出は。…続きは次の機会にするとしよう。
時間は腐るほどあるのだから。」



ダルフィの酒場


ロミアス「ほう、部下も連れずによく来れたものだ。
貴様が握っているザナンとの交渉の手綱が命綱だということを忘れるな。」

セビリス「ザナンは今回の件には関係ない。娘の連行はサイモアの個人的な指示だろう。
私を通じて、彼女を解放する用意があると通告してきた。」

ヴェセル「サイモアの要求は?」

セビリス「近くパルミアで各国の集まる会談がある。それにエレアの代表として出席することだ。」

ロミアス「…それだけか?私達にすれば、むしろ歓迎したい機会だが、奴に何の利があるというのだ?」

セビリス「君達を捕らえるつもりなら、幾らでも別の方法がある。
サイモアのことだ…趣味の悪い余興でも考えているのだろう。」


ザナンの皇子宿営


サイモア「ザナンの皇子クラインの葬儀は、耳にしたことがあるだろう。中々盛大な式だったからね。
だが、その棺に遺体が収められていないことを知る者は少ない。
クラインは、遠乗りの際に崖から転落死したと言われている。
…事実は違う。想像はつくだろう?クラインは殺されたのだ、白子と蔑まれた少年によって。

少年は、遠景を見やる兄を崖から突き落とした。
しかし、その背を押した時、同時に少年の中の何かも死んだのだ。
邪魔者のいない冷たい宮殿の中で、初めて権力と自由を全身に感じた彼は気付いた。
戦争に反対する博愛の心も、貧しき者を救う優しさも、弱者への慈愛も、
少年が掲げていた全てのモラルは、勝者である兄の価値観を否定し、反転させたいという欲望、
つまり自身が最も軽蔑していた力への欲求から生まれた道具に過ぎなかったのではないかと。

ザナンの継承者となった彼は、前に進めなかった。
望もうと思えば、力を行使し第二のクラインになれたのだ。
だが、醜く脆弱だった過去の自分に対する愛や救いは?
あの日々味わった苦痛と葛藤を忘れ去り見ぬふりをするなど、どうしてできよう?
私は自分を肯定するすべを、世界を受け入れるすべを失った。
モラル、価値観、感情、思想…何も信じられるものはない。
誤解しないでくれ。私は不幸だとか後悔の念とやらを訴えたいのではない。」

ラーネイレ「では何故、私にこんな話を?あなたが定義した選択自体が、私には欺瞞に見える。
弱者への慈愛を説いていたという過去の少年は、ありのままの醜い自分を本当に受け入れていたの?
あなたの苦しみがわからないとは言わない。
でも、少年が世界から拒絶され、逆に世界のほうを遠ざけていったように、
あなたは不完全な自分の生に背をそむけ、苦しみや憎悪を自ら求めることで、
心の空白を埋めてきたのではないのかしら。

信じられるものが何もないと、あなたは言った。私は、その精神の内に可能性を感じるわ。
決して自分が愛することのできないものたち、決して自分を愛してくれることのないものたちに、
憎しみや不信以外の方法で関係を結べると思うから。」


サイモア「…驚いた。
お前は、エレアの少女は、またしても私の闇に希望という名の灯りを提げようというのか。
だが、今となってはもう遅い。
お前と話して分かったことは、この世界に善意というものがあったなら、
私にも別の未来の可能性があったというだけだ。それには感謝しよう。

…そう、森の秘密を教える約束だったね。
お前の考えている通り、エーテルの風も森も、災厄と恐れられるメシェーラではない。
メシェーラは、言うなれば全ての生命を食らい尽くす細菌だ。
それはレム・イドの時代に一度滅び、シエラ・テールがその骸から拾い上げた。
いや、シエラ・テールはメシェーラ「そのもの」なのだ。
星を食らう巨人は、私の中に、人間の中に、全ての生物と環境の中に潜んでいる。」

ラーネイレ「そんな…もしそうならば、何故メシェーラという菌に侵された生物が存在できるというの?」

サイモア「全てに答えてしまっては楽しみがないが、その問いにだけは過不足なく答えよう。
我々が存在できるのは、異形の森があるからだ。
森が滅べば、やがて大地から生命は消えるだろう。何年後か、何百年後かはわからないけどね。
ふふ、異形の森という呼び名は滑稽だ。この星にとって本当の異端者は私達の方なのに。」

ヴィンデールが人間の手により滅ぼされるのは、時間の問題だ。
自分の信じていたものが崩れていった時、そしてもう何もかも手遅れだと知った時、
世界はどう変わるのかな?私は楽しみでならない。」

ラーネイレ「馬鹿げている。あなたの「生い立ち」は理解したわ。
けれど、あなた一人の自我の問題を世界の存亡と秤にかけるなんて。」

サイモア「馬鹿げているから楽しめるんじゃないか?
もっとも、理念とやらが聞きたいなら、ヴァリウスに尋ねるといい。
あれは私とは違う立場で動いているようだから。
…話はこれまでだ。今宵はゆっくりと休むがいい、異形の森の魔女よ。
お前には明日、面白いシナリオを用意しておいたからね。」



パルミア城 一室


ロミアス「何時になったら諸侯に謁見できるんだ。
本当にサイモアはラーネイレを解放するつもりなのだろうな?」

セビリス「…さあな。奴の約束には何の保証もない。」

ロミアス「なんだと、貴様…」



ラーネイレ「…ロミアス、ヴェセル!良かった、無事だったのね。」

ラーネイレ!無事を気遣っていたのはこちらの方だ。奴に何をされた?」

ラーネイレ「何も。ただ、彼の話を聞いただけよ。
それより、早くここを出たほうがいい。何か悪い予感がするの。」



兵士「いたぞ!暗殺者だ!」


ロミアス「どういうことだ、ラーネイレ。」

兵士「仲間もいるぞ。応援を呼べ。城の周りを固めるんだ。」

セビリス「…ふ、そういうことか。奴は私達を暗殺者に仕立て上げるために呼んだのだ。
そして、殺されたのは恐らく…」

ラーネイレ「ジャビ王…そんな…」

ヴェセル「包囲は完全ではない。今なら突破できる。」

セビリス「私達が逃げおおせるのも奴の計算のうちだろう。だが、今はその選択をとる他にない。」

ロミアス「サイモアの陰謀とやらにはうんざりだ。
いったい、何時になったら我々は自分自身の意思で行動を選択できるのだ?」



  • 最終更新:2014-01-10 14:04:48

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