物語のあらすじ


序章



今はもう忘れ去られた昔
イルヴァの地に十の文明の残骸が埋もれ
レム・イドの傷跡が癒えぬまま迎えた十一紀、
最も多くを破壊し生み出したと語られる時代
シエラ・テールの物語。



この世界は「イルヴァ」と呼ばれている。

東方のアセリア大陸の国、カルーンにて、一ヶ月降り注いだ雨が止んだ後、
殆どの人の住めない「異形の森」が急速に範囲を拡大するという現象が起きていた。
アセリア大陸から難民が溢れ出す中、
西方のティリス大陸に接する諸島内に古くより在る強国「ザナン」の皇子が、
異形の森の拡大現象は、十番目の文明「レム・イド」を滅ぼした災厄「メシェーラ」によるものだと主張し、
異形の森とそこに住む民「エレア」を根絶するべきと唱えた。

異形の森は、正式には「ヴィンデールの森」と呼ばれている。
森から発生する、光る気体状の物質「エーテル」は、エレア以外の種族にとって非常に有害であり、
エーテルに晒され続ければ「エーテル病」と呼ばれる不治の病に侵され、最終的には死に至る。
それゆえエーテルに耐性を持ち、災いの森に住まう「エレア」は他民族から嫌悪される事が多く、
異形の森の拡大現象により迫害は激化し、エレアが他民族の住む土地から離れ、
森へ追いやられた後も溝は埋まらず、他民族によるヴィンデール掃討は目前へと迫っていた。

そんな折、ティリス大陸の北、「パルミア王国」の港街へと向かう商船、
クイーン・セドナ号に密航していた主人公(プレイヤー)は、
深夜、季節はずれのエーテルの風に巻き込まれる。
エーテルの風によって引き起こされた嵐の猛威に、
商船はあえなく難破し、主人公は海へと投げ出されて意識を失った。



異形の森の民


主人公が意識を取り戻したのは見知らぬ洞窟の中であった。
その場所へ、瀕死の主人公を運び込み、癒してくれたのはエレアの男女だった。
男はロミアス、女はラーネイレと名乗る。
(彼らの二つ名を、「異形の森の使者 ロミアス」「風を聴く者 ラーネイレ」という)

二人は異形の森の使者であった。
エレア殲滅を唱えるザナンの皇子に呼応し、各国が森の掃討へ参加表明をしめす中、
大国ながら未だ中立姿勢であり、ラーネイレと知己であるパルミア国の王に、
エレアの民への助力を請うため、謎の討手を掻い潜りながら、急ぎの旅を続けている途中である事を明かされた。

川辺に倒れていた主人公を、行き掛かりで救出したものの、急いでパルミア王の元へ発たねばならぬらしい。
主人公は命の恩人達から、簡単な冒険の手ほどきや、装備や食料などの世話を受けたのち、
別れ際に、まずはこの場所より近隣の鉱山街、「ヴェルニース」へ行くとよい、と教えられる。



皇子の演説


ヴェルニースへ辿り着いた主人公は、街の入り口でザナンの兵士に呼び止められる。
身体検査を受け、開放時に、何事かと尋ねると、「ザナンの皇子」が遊説に来ていることを告げられた。

鉱山街の広場へ入ると、ザナンの皇子サイモアが、側人に支えられながら演説を行なっていた。

「イルヴァの大国、「エウダーナ」国と「イェルス」国の休戦からの傷もいえぬまま、
異形の森とエレアが、先文明を滅ぼせしめた「星を食らう巨人」メシェーラという災いを呼び起こそうとしている。
これまでは、大国同士でいがみ合っていたが、今は手を組み、
人類存亡の脅威である異形の森とエレアを一掃すべきであり、二大国のどちらにも属しておらず、
中立姿勢を保っている大国、ここパルミア国民の支持を得る事が必要不可欠なのだ」と説く。

数年前、偉大な歴史を誇る大国ザナンでは、王位第一継承者を喪い、現在の皇子はその弟である。
弟皇子は白子の病身でありながら、才人であり、若くしてエーテル研究の大家であった。
その皇子御自ら出向いての演説に、集まったヴェルニースの住人が歓声を上げて呼応する中、
災いの根源とされるエレアに救われた身である主人公は、悪い予感を覚えつつも、その場を後にする。



酒場にて


その夜、ヴェルニースの酒場で酒を飲んでいたザナンの皇子護衛部隊長、「紅の英雄ロイター」は、
酔った部下の引き立てて来た浮浪者のような男が、かつて「ザナンの白い鷹」と呼ばれ、
自身の好敵手であった男であり、ある事件により、国や軍、輝かしい地位をも捨て国外逃亡し、
捜索中であった「ヴェセル・ランフォード」である事に気付く。

黙するヴェセルに対し、昔語りを始めるロイターであったが、ロイターがヴェセルの亡くした女に言及するや
ヴェセルの態度は硬化し、話を続けるより牢に入れられていた方がましだと吐き捨てる。
落胆したロイターは会話を打ち切り、その身柄を拘束した。

(ヴェセル・ランフォードは、現在「虚空を這いずる者」と称されている)



胎動


主人公は、パルミア国内にて冒険者としての経験を積みつつ、
「ネフィア」と呼ばれる過去文明の遺跡を探索していた。
ヴェルニースに程近い「レシマス」という名の、諸外国でも高名を馳せている
未踏のネフィアへ足を踏み入れた主人公は、
不思議な運命の鼓動を感じ、探索を開始する。


一方ヴェルニースでは、ザナンの皇子サイモアへ、ロイターよりヴェセル捕縛の報が届いていた。
伝令の兵士に対して、ヴェセルを開放し、捨て置けとの命令を下したサイモアは、
長きに渡り行方を捜させていたヴェセルが、今となって見つかったのは皮肉だと呟く。
その言葉に対し、皇子の側近である「青い髪のヴァリウス」に、
今更ヴェセルに何を期待しているのか、と問われたサイモアは、
自分の物語を完結させるために、これから起こる喜劇を、生きて見届けてくれればよい。と応じた。



王都パルミア


レシマスの地下3階まで辿り着いた主人公は、瀕死の重傷を負った男を発見する。
その男、「パルミアの影 スラン」は、自らを、パルミア王の命でレシマスに潜行していた斥候であると告げ、
二大国の衝突回避と世界の危機を防ぐために、
自らの書いた手紙を「パルミア国王ジャビ」に届けて欲しいと言い遺して息絶える。
主人公は、その遺言を受け、一路パルミア国首都パルミアへと向かった。


主人公がパルミアに辿り着いた頃、王の間にて、
エレアの使者、ラーネイレが、無事パルミア王への謁見を果たし、会見が行なわれていた。
その場にはザナンの皇子サイモアと、その側近ヴァリウスも列席している。
エレアの民への助力を嘆願するラーネイレに対し、ジャビ王は、
「パルミア国は二大国の衝突を防ぐ歯止めとして存在しており、
ザナンの皇子の論に賛同する国が多く存在する情勢でパルミア国が異を唱えれば、
ザナンだけでなく、二大国やその他諸国すら敵となってパルミアを滅ぼすだろう、
エウダーナ国・イェルス国・パルミア国という大国の三竦み状態を解かれた場合、
二大国間での戦争再開は自明の理であり、再びイルヴァを戦渦の地に戻してはならない、
ゆえに、心苦しいが協力は出来ない」
と告げる。

対してラーネイレは、罪なき民の犠牲で脆い平和を作るのか、と反駁するが、
そこでザナン皇子の側近ヴァリウスが問うた。
「エレアは自らを罪なき民と自称するが、
異形の森から発生したエーテルの風でどれだけの被害が出ているか知っているのか」と。

対しラーネイレは、
これまで人類と共存出来ていた異形の森が、突如異変を起こし始めた原因を調査すべきである、と反論し、
「森の異変もエーテルの風も「メシェーラ」ではない別の現象ではないか?」と疑問を呈する。

しかし、ジャビ王はその発言を遮り、続きは明日行うとして、ラーネイレをその場から退席させた。

ザナンの皇子サイモアはジャビ王に対し、自身の長年に渡るエーテルと森に関する研究成果を基とする持論を述べ、
「仮に、己のメシェーラに対する見解が間違っていようとも、
異形の森の拡大が民草の住まいを奪っている事は明らかである」
と抗弁し、ラーネイレの身柄を自分へ渡すように要求する。

その言に、ジャビ王は、サイモアがラーネイレの身柄を要求する理由を、
「彼女が真実を語っているから」ではないかと問うたが、
対してサイモアは、ラーネイレに関心を寄せるのは別の理由がある、と返答、
さらに「強国ザナンあってのパルミアではないか」と、王に圧力を掛け、ラーネイレを引き渡させようとする。
しかしジャビ王は、ラーネイレは大切な客人であるから、と要求を拒み、
「パルミア国は、依然として異形の森への不干渉の立場を崩さない」と述べ、強引に会見を終了させた。

王の間に残されたザナン国の二人。
皇子サイモアは、ラーネイレが「あの女」にそっくりだと呟き、
ヴァリウスも、「白き鷹に続いて、ラーネイレが現れたことで運命の歯車が回り出したのだ」と答える。
皇子は嬉しげに、
「運命など信じないが、舞台が予想以上に賑やかになったことは歓迎する、
ラーネイレとヴェセルには、相応の役柄を用意するように」と命じた。



レシマス


ジャビ王に謁見し、斥候スランの遺書を提出した主人公は、王直々に褒美を下謁されたのち、
パルミアのために力を使う意思があるなら、手を貸してくれとの言葉を賜り、
パルミア王宮図書館の司書にして、レシマス調査隊副長であるエリステアより
伝説のネフィア・レシマスに関する詳細な情報を得られるようになった。

レシマスについての概要は以下の通り。

およそ五百年もの昔、パルミア国三代目の王であったザシムと、その従弟である術師ゼームが調査隊を結成し、
最深部の、秘法が眠る部屋へと赴いたが、帰還したのはザシム王のみであった。
ザシム王は家来に対し、レシマスの秘宝は常闇の中で永遠に眠っているべきものであり、
直ちに部屋を封印する必要があること、従弟ゼームはもはや帰って来ない事を告げる。

そして、最深部は封印され、封印の鍵となる三つの魔石は、その価値を秘されたまま、
当事において最も強大かつ邪悪な存在であった三人の者へと渡された。


レシマス調査隊副長エリステアからの最初の任務は、
主人公と同じくレシマスの調査を請け負った、東の大国カルーン出身の冒険者カラムの捜索である。
彼からの経過報告が、既に数週間途絶えているのだという。
最後の報告が確認されたのは、レシマスの地下16階であることを告げられ、
早速主人公は捜索任務に赴くのであった。



運命の出会い


主人公が再び首都パルミアを発った頃。

首都パルミアの酒場にて、ジャビ王の使いより紹介された、
金次第でどんな任務でも引き受けるという、とある用心棒を雇えとの指示通り、
ラーネイレとロミアスは、リアナという人物を捜していた。
現れたのは一人の少女。繋ぎ役であるリアナに護衛依頼をすると、付いて来るよう促される。
彼女に連れて行かれた先に居たのは、ザナン国の脱走兵ヴェセルであった。
その消極的な態度、荒んだ生活の表れた部屋、またヴェセルが麻薬中毒者である様子を見て取ったロミアスは、
憤慨しその場を立ち去ろうとするが、ヴェセルはラーネイレを見るや、
「エリシェ」という名を呟き、依頼を受ける気になっていた。
なおも渋るロミアスに対しヴェセルは、既に周囲が討手による殺気に取り囲まれている事を告げ、
二人のエレア達を連れてその場を脱出した。



ダルフィの霧


主人公は、エリステアに渡された鍵でレシマス地下3階の鍵を開け、さらなる深層へと降りて行った。

その頃、パルミア国内北西の森林の中に位置する「犯罪者達の街ダルフィ」にて、
街の主である「ダルフィの霧 セビリス」がラーネイレ・ロミアスと面会していた。
ロミアスは、「有事の際にはセビリスを頼れ」とジャビ王に忠告されていたことを告げ、
自分たちをつけ狙う者の素性を探って欲しい」と依頼する。
それに対しセビリスは、
「調査するまでもなく、ラーネイレの顔とヴェセルの姿を見れば、黒幕がザナンであることは明らかだ」と告げる。
ヴェセルに対して知己であるかのように話しかけるセビリスだが、
ヴェセル自身にはセビリスと会った覚えは無く、不審を抱く。
彼は、変わったのはお互い様だと自嘲気味に語り終えると、にわかにエレアの使者二人とヴェセル一行を拘束する。
既にセビリスは、皇子の側近であるヴァリウスと通じていたのであった。
「パルミアを裏切るのか」と抗議するラーネイレに対して、
皇子が、ラーネイレとその仲間達に危害を加えることはあり得ないと断言するセビリス。

一行がその場から引き立てられた後、ヴァリウスに対して約束の履行を求めるセビリス。
実は、セビリスは、ヴァリウスにより部下を人質に取られていたのである。
ヴァリウスは人質を解放する旨を伝え、セビリスに対し、
「貴方が生きていた事は、あの方には秘密にしておく」と告げ、その場を去った。



白子の皇子


皇子の宿舎にて、捕らわれたラーネイレと、サイモアの会談が始まった。
いぶかしむラーネイレに、ただ話し相手が欲しかっただけだと告げるサイモア。
根拠も無く異形の森とエレアへの憎しみを扇動しているサイモアとなど、
理解し合えるはずはないと拒絶するラーネイレに対し、
サイモアは、公言する自説が虚言であることをあっさりと認める。
自身の長年に渡るエーテルと異形の森に関する研究で、サイモアは「森の真実」を突き止めていた。

異形の森は、星を滅ぼす厄災メシェーラの復活を感じ取って活性化し、
メシェーラに対する抗体であるエーテルを代謝しているのだという事。
  
そして、異形の森の真実を話す前に、自身の物語を聞いてもらいたい、と、昔語りを始めた。


以前、ザナンには二人の皇子がいた。
次男であり、脆弱で醜い白子である弟と、彼とは光と影のように対照的であった美しく生気に満ちた長兄。
戦いを好んだ兄とは異なり、弟は芸術や平和を愛し、戦災孤児や恵まれない者達への援助に奔走していた。
そんな中、彼は異形の森と、それにより迫害されている民エレアに興味を抱き、研究するようになっていた。
それは、不完全な存在である自分と、異形の森やエレアの立場を重ねていたからであり、
森への偏見をぬぐい去り、共存の道を探ることで世界を変えられると信じていたからである。

しかし、研究は遅々として進まず、ただ年月だけが過ぎていった。
それでも弟は、強き者が支配する自国の風潮と世界のあり方を受け入れることが出来ず、
白子として生まれたことを呪い、力に満ちた兄を恨み、世界を憎んでいた。
そんな中、彼は一人の女性と出会い、一目で惹きつけられた。
その女性は彼と同年代のエレアであり、エレアにとっては生き辛いはずのザナンで懸命に生きていた。
その姿に、彼は自身を重ねていたのである。
しかし、結果として、弟の心に傷を残し、その女性は去っていった。

ここまで語り、サイモアは、続きはまたの機会に、と言い、話を打ち切る。



救出作戦


同時刻、ダルフィの酒場にて、ロミアスとセビリスが密談中であった。
セビリス曰く、ラーネイレの連行はザナン国の意向ではなく、サイモアの個人的な行動であり、
ラーネイレ解放の打診があったのだという。
その条件は、近くパルミア国で行なわれる各国首脳の会談にエレア代表として出席すること。
エレアにとって、余りに都合の良い状況に不審を抱くロミアスへ、
セビリスは、皇子が趣味の悪い余興でも考えているのだろう、と告げるのだった。



真実


翌日、サイモアの宿舎では、ラーネイレを相手に物語の続きが語られていた。

ザナンの光であった兄皇子は死んだ。
世間一般では、遠乗りの際に崖から転落したと語られているが、
事実は弟が、長兄を突き落としたのであった。
しかし、兄を殺して権力をつかんだ瞬間、弟は兄とともに自分の中の何かも死んでいたことを自覚する。
すなわち、これまで彼が掲げてきた戦争反対の博愛も、貧者を救う優しさも、弱者への慈愛も、
全ては兄の価値観を否定し、反転させたいという欲望、
言い換えればこれまで自分が最も軽蔑していたはずの力への欲求、そこから生まれた偽善に過ぎなかったのである。
晴れてザナンの後継者となった白子の皇子だったが、
影でありし頃の苦痛と葛藤が心をよぎり権力を行使することもかなわず、
前に進むことが出来なくなっていた。

そこまで語ったサイモアに対してラーネイレは、
「あなたは信じるものが何もないと言うが、その精神の内にこそ可能性を見いだすことが出来る」と説く。

その言葉に、エレアの女性が、再び自分へ希望を与えようとしたことに驚き、
「もし世界に善意があれば自分にも違った未来が会っただろう」
と礼を言うサイモアだが、同時に、今となっては、もう遅いとも告げた。

そしてサイモアは、ラーネイレへ「異形の森の真実」を語る。

前紀レム・イドを滅ぼしたメシェーラとは、目に見えない細菌であり、全ての生命を食らい尽くす存在である。
現時代、シエラ・テールでは、メシェーラが全ての生物と環境の中に潜伏しており、
その状況下で生物が生きて行けるのは、メシェーラへの抗体であるエーテルが、
異形の森から生産されているためであり、異形の森が消滅すれば、
障壁の無くなったメシェ-ラの侵食により、いずれ大地から全ての生命は消え失せる。

そして、異形の森が人類の手で滅ぼされるのは時間の問題であり、
真実が明らかとなり、己の信ずるものが崩れ、何もかもが手遅れだと理解した時、
世界がどう変わるのかが楽しみだと告げるサイモア。

対し、サイモア一人の自我の問題と世界の存亡を秤に掛けるなど馬鹿げている、と言い切るラーネイレ。
しかしサイモアは、馬鹿げているからこそ楽しめるのだと云い、
理念を聞きたければ、自分とは違う思惑で動いているらしいヴァリウスに訊くと良い、
明日は、ラーネイレに面白いシナリオを用意している、と告げる。



暗殺


次の日、パルミア城の一室ではロミアス、セビリス、ヴェセルが諸侯との謁見の時間を待っていた。
そこへラーネイレが焦った様子で駆け込んでくる。
悪い予感がするから早くここを離れるべきだと話すラーネイレだが、既に手遅れであった。

ジャビ王が暗殺され、使者一行は暗殺犯という濡れ衣を着せられていたのである。
凶報を知り、逃亡することすらサイモアの計画であることを分かっていながらも、
他に手立てもなく強行突破を図った一行は、辛くも脱出に成功する。



異国の探索者


レシマスを探索し続けていた主人公は、ようやく地下17階に到達した。
探していたカルーン国の探索者カラムを発見するが、時既に遅し、重傷を負い瀕死の状態であった。

いまわの際のカラムからエリステアへの伝言を託された主人公だが、その内容は驚くべきものだった。

レシマスの秘法の守護者は、五百年の昔にレシマスの最深部へザシム王と共に赴き、
不帰の者となった王の従弟、ゼームその人なのだという。
加えてカラムは、ザナンのサイモアも秘法を狙っているという事、その理由の一端にも触れていた。

レシマス最深部に眠る秘法の名は「常闇の眼」と言い、世界の真実を写すのだという。
既に自説に絶大な支持を集めているサイモアが、あえて常闇の眼を求める理由、
それは彼の説が偽りであるからではないか。
そして、もし偽りなのであれば、サイモアの本当の目的は何か。
悪い予感を抱きながら、迫り来る自身の死期を自覚していたカラムは、
一刻も早くその情報を王へ伝えるように頼み、主人公に重荷を負わせぬよう、自らの命を絶つのだった。



ザナンへ


主人公が急ぎパルミアへ帰還した頃、鉱山街ヴェルニース郊外には、逃げ延びた使者一行の姿があった。
ヴェルニースの様子を偵察していたロミアスによれば、
エレアへの援助を断ったジャビ王を、異形の森の魔女が邪悪な術で殺した、
などといった噂が町中に広まっているという。
セビリスは、世間の反感を買ったラーネイレ一行を異形の森へと追い詰めることで、
異形の森掃討への大義名分を得るためだ、とサイモアの目的を推測する。
それに対し、争いを避けるために森に籠っても、その非戦の行動すら不信の対象となるようでは、
エレアの居場所が世界のどこにあるのかと吐き捨てるロミアス。
ラーネイレは、サイモアの狙いが何であれ、仲間へ警告するために森へ帰らなければならない、
しかしその前に、サイモアの言葉に従い、森の秘密を知るために彼の研究所を探すべきだと云う。
サイモアの言うように、実際に異形の森がメシェーラを抑止しているのならば、
その証拠を掴み、公表する事が出来れば希望は残されているからである。
そして、サイモアが、彼女たちの出す答えを待っているような気がするとも。

ラーネイレの言を受け、サイモアの研究所を求めてザナンへと赴くことにした一行であった。



使命


王都パルミアに帰還した主人公は、ラーネイレによるジャビ王暗殺の凶報を受け驚愕しつつも、
任務を果たすためエリステアの元に赴き、カラムに託された伝言を伝える。
エリステア曰く、常闇の眼とは、イルヴァの大地に築かれた全ての歴史の真相を網羅すると伝えられており、
サイモアが自分の説の誤りを葬るために秘法を求めているならば、それを阻止しなければならないと云う。
カラムとジャビ王の遺志を継ぐためにも、喪に服す時間はないというエリステアは、
レシマス最深部への扉を開くための三つの魔石の回収を主人公に依頼する。
そして、主人公は魔石を所有する邪悪な存在達と対峙することになるのであった。
  


和解


一方その頃、ザナンへ向かう船上では、セビリスとラーネイレが語り合っていた。
ラーネイレが、セビリスをも巻き込んでしまった事への謝罪と、船を用意して貰った礼を述べると、
セビリスは、自分にも、ヴェセルにも、各々の理由があって旅に参加しているのだと語る。
ラーネイレは、ヴェセルについて、いい人ではあるが、その笑顔が心を隠す仮面のように思えると云い、
その言葉に対しセビリスは、この世には不器用な人間もいるのだと答えた。



追憶


レシマスの封印を解くための魔石を求め、最初に主人公が踏み込んだのは「灼熱の塔」。
文字通りの灼熱地獄に、たちまち体力を奪われていく。
その塔の最深部で対峙するのは、魔石の所有者である「赤き義眼のクルイツゥア」と
その伴侶である「鋼鉄竜コルゴン」であった。
死闘の末にクルイツゥア打倒に成功した主人公は、魔石の一つ、賢者の魔石を回収することに成功する。


ザナンへの旅を続けるラーネイレ一行。ある夜、野営の焚き火の炎を見つめるラーネイレに、
ヴェセルが声を掛ける。ラーネイレの横顔は「エリシェ」を思い出させるという。
以前にもその名前を聞いた、大切な人なのか?と尋ねるラーネイレに応え、ヴェセルは思い出話を始める。

未だ二大国の戦火があちこちに飛び火していた頃、失意を抱え、故国イェルスを後に、
戦災孤児を満載した船で、ザナンの港町アルティハイトへ渡った少年の日のヴェセルは、
降り立ったそこでエリシェと出会った。
エリシェはラーネイレと同じくエレアであり、ヴェセルが目撃した折も、
船内で流行った病の原因がエリシェだという根拠の無い中傷を浴び、
孤児院への引き取りを拒まれている最中であった。
蔑視と誹謗の目に晒されながら、それでも毅然として耐えていたエリシェの手を、
ヴェセルは、気が付けば取っていたのだという。

港の倉庫に寝床を設け、ヴェセルとエリシェは家族のように互いを慕い、力を合わせて暮らしていた。
そんな中、礼拝の日の朝が来る度に、誰かから金貨や食料、衣服などが送られてくるようになった。
持ってくる者に聞いても「アルティハイトの妖精に頼まれた」と答えをはぐらかされるばかりではあったが、
それは単に金や食料というだけでなく、暖かい希望の灯そのものだったと、ヴェセルは語った。



エリシェ


主人公が次に挑んだのは、死者の洞窟である。
その最深部で待ち構えていた者は、「闇の奇形イスシズル」
強力な魔術を繰り出す異形の強敵との戦いの末、主人公は魔石の一つ、愚者の魔石を回収することに成功した。


ヴェセルの思い出話は続く。
アルティハイトに来る前のヴェセルは、イェルス国の士官学校「アテラン」の生徒として、
周囲の人間を蹴落とし、踏み台にする冷酷な少年であった。
しかし、思わぬ病に倒れ、士官学校を中退して2ヶ月間弟の介護を受けた彼が再び街へ出た時、
彼にとっての世界は一変していた。

周囲の人間から向けられる視線が悪意と軽蔑に満ちているように思えたのである。
しかし、それはヴェセル自身の価値観が、他人の目を鏡にして彼自身を責めているのに他ならなかった。
それから彼は、自身の価値観を変えようと努力したが、
心の中に染みついた士官学校時代の冷酷な自分がそれを嘲笑し、アテランに戻るように唆し続ける。
そんな矛盾した心の戦いに疲れ切ったヴェセルは、
喪失感と、自分を消したいという願望のみが残り、逃げるように故郷を去ったのである。

エリシェはラーネイレほど美しくはなかったが、その明るい瞳は、
ラーネイレと似て、全てを許し、受け止めてくれるような純粋な輝きだったと語るヴェセル。
ヴェセルにとって、エリシェはあらゆる意味で彼自身が生きる理由となった。
エリシェを守ることを大義名分として、彼は士官学校時代の自分を受け入れ、再び他人を蹴落とす道へと進んでいた。
そして、アルティハイトに降りて七年、ヴェセルはザナン将校の末端にまで上り詰めていた。



結末


封印の魔石を手に入れるため、最後に残された古城へと挑む主人公。
駆け巡る魔獣に騎乗し、恐ろしい武器を以て相対する「古城の主 ワイナン」を打破し、
ついに最後の封印である覇者の魔石を手に入れ、三つの魔石を手中に収めたのであった。


ヴェセルの回想は佳境へと向かう。
ある秋の日、エリシェと二人で芝居を見に行った帰り、貴族の屋敷の火事に遭遇した。
エリシェは、屋敷の中に誰か残っていないか心配し、近くで声をかけ続けていたが、
突然出口にあった木の支柱がエリシェの上に落下し、彼女はその下敷きとなってしまう。
なんとかしてエリシェを救い出そうとするヴェセルだが、重い支柱を一人では持ち上げることが出来ない。
必死の彼が周囲を見渡すと、そこにあったのは
エレアという存在に怯えながら、助けようともせずに傍観し続ける冷酷な人々の群れだった。
しかし、ヴェセルは彼らを責めることが出来ないと言う。
仮に助けを求めて来た相手が自分の競争相手であれば、自分も同じ行動を取っていたかもしれないからだと。
そして、燃え広がった火災によって、エリシェは焼け死んでしまった。
焼け焦げたエリシェの骨を瓦礫の下から見つけた瞬間、流した涙とともに、彼の時間は止まってしまったのだった。



地の底へ向かうもの


三つの魔石を手にした主人公は、揚々パルミアに帰還し、エリステアへ報告する。

最後の任務が下された。
それは、レシマス最深部から常闇の眼を回収し、ザナンの陰謀を阻止するというものである。
現在亡きジャビ王の代わりにパルミア国を統治しているスターシャ王妃直々に王家伝来の宝物を賜り、
ついに主人公は、レシマスの最深部へと向かうのであった。



青き髪の男


ラーネイレ一行は、ようやくザナン国内にあるサイモアの研究所を探しあてていた。
そこに待ち受けていたのは、皇子の側近ヴァリウスであった。
ヴァリウスは、ここにはラーネイレ達が求めている証拠はないと告げる。
どのみち証拠を携えても、今更誰もエレアの言葉になど耳を傾けないだろうという彼は、
一行へ真実を伝えるという。

ヴァリウスはラーネイレと同じく異形の森の民、エレアである。
裏切り者の言葉など信用できないと言うロミアスに対して、
信じるか否かは自由だが、同胞としてラーネイレ達の境遇に同情すらしていると言い、
ヴァリウスは、彼の言うところの「真実」を語り始めた。



メシェーラ



先文明レム・イドでは様々な共同体が存在し、友愛の精神で理想的な社会を築いていたが、
その中でも共同体に属することが出来ない異端者、ユタスと呼ばれる者達が存在していた。

エーテルとはレム・イド末期に発見され、樹木から採取され、環境に無害であるうえ、
様々な薬品に化学変化をもたらす貴重な物質だった。
ユタスの商人は、各地に広大な土地を持っていたので、
「星の収穫」(エーテルを採取すること。当時は神聖化されていた)
を活発に行ない、それによって社会に居場所を見いだしていた。

メシェーラはどこから来たか不明であるが、エーテルがメシェーラに対する抗体としての機能を持っていたのに、
「星の収穫」によりエーテルを採取し過ぎたため森が弱ってしまい、結果として、森はメシェーラに浸食され始めた。
ユタスはその前兆を察知していたが、自分たちの立場を失うことを恐れてそれを隠蔽し、
結果として全てが手遅れとなってしまった。
メシェーラは森を侵食しきると、世界中に根を張り巡らせ、イルヴァの生物が生きていけない環境を生み出していった。
メシェーラに浸された森が生み出す毒の空気の中で、レム・イドの人々は死を待つばかりであった。

東に位置し、原生林に覆われたごく僅かな大地のみがメシェーラの浸食を免れており、
その森を当時の人々は、「希望」を意味する「ヴィンデール」と呼ぶようになった。
文明が衰退する中、突如ヴィンデールの森から、大量のエーテルが発生し、
エーテルの風として大陸に吹き荒れるという奇跡が起こった。
結果として、イルヴァの環境はエーテルを産むヴィンデールの森と、
それによってメシェーラの力を弱められた外の森という異なった自然を持つに至った。

かくしてレム・イドの時代は終わりを告げ、新たなる時代、シエラ・テールが始まったが、
永い時間を経て、ヴィンデールの森の中から、弱いメシェーラの蔓延する外部の森へ適応した人類や、
メシェーラ無しでは生きられず、ゆえにエーテルに害されてしまう特性を持ち、
外部にしか住めない体質を持った人類が生まれるようになって行った。

しかしヴィンデールの森が消滅すれば、力を弱められていない本来のメシェーラが蔓延し、
いずれイルヴァの全ての生命は滅びることになるだろう。


語り終えたヴァリウスに、ロミアスが疑問を呈する。
森の歴史は理解したが、イルヴァを、異形の森を滅ぼす事で変えようとするヴァリウスの動機が理解出来ない、と。
ヴィンデールとエレアを蔑んだ者達への復讐だとしても、全てが死に絶えれば復讐に意味などないのだから。

その問いに、ヴァリウスは、復讐ではなく戒めであり、「きっかけ」であると答える。
そして、救いは既に手の内に秘めており、生物が滅びることもない、と。

ヴァリウス曰く、レム・イドのような文明が理想的だが、
友愛という弱い理念を根幹にした社会では、ユタスのような異端の発生を最小限に抑えることが出来ない。
ユタスを克服した社会を構築するには、より強く明確な文明の意思が必要であり、
その計画には、ヴィンデールという犠牲が不可欠である。
そして、いつかはラーネイレ達も、自分の思想を理解出来る筈だと云った。



兄弟


虚しい議論に落胆しながらも研究所を去り、いましも滅ぼされようとするヴィンデールの森を目指す一行。
そんな中、ヴェセルはセビリスに対し、なぜ自分の事を知っているのかと尋ねる。
それに対してセビリスは、自分はサイモアに殺されたザナンの第一皇子クラインであると告白した。

驚きはしたものの、しかしヴェセルは、ただの一士官に過ぎない自分を知っている理由にはならないと再度問うた。
それに対してセビリスは、過去を語り始める。


一人の少女が全ての「きっかけ」であった。
アルティハイトでエレアの少女を囲む人々の冷たい視線と、ためらうことなく少女をかばった金髪の青年。
その瞬間から、サイモアにとってエリシェは希望であり、白き鷹ヴェセルは憧れであったのだ。
ヴェセルとエリシェが幸福に暮らすことこそがサイモアの望みであり、救いでもあった。
ザナンでエレアの娘という足かせを掛けられた者が、宮廷に仕官するなど夢物語であったというのに、
ヴェセルはそれを成し遂げたのだから。


それを聞いてヴェセルは「アルティハイトの妖精」がサイモアであったことを悟るのだった。



ヴィンデールの森



ヴィンデールの森まであと三日程の距離までやってきたラーネイレ一行。
しかし、森に帰ったところで、森への侵攻を止めるどころか、遅らせることすら困難だと指摘するセビリス。

対してロミアスは、とりあえず同胞達に危険を知らせるが、その後のことは分からないという。
彼にとっても故郷を失うのはつらいことだが、ある部分では好きにさせればいいとすら思っているらしい。
なぜなら、森を失わせた者達や傍観者達は、いずれ己の行為によって絶望と後悔の念に襲われるのだから。
しかし、ラーネイレはそうは思ってないはずだと言うロミアス。
応えてラーネイレは、ロミアスの気持ちも分かるが、
それでも希望の芽を残すために、最後の瞬間まで自分の意思で森を守るために行動したいと告げた。


その頃ザナンの王宮にて、サイモアは、自分の故郷を滅ぼすというのはどういった心持ちか、とヴァリウスに問う。
ヴァリウスは、この戦は皆が共謀者になることに意味があるのに、
二大国の一方、イェルスが参加しなかったのは誤算だと言いながら、
エレアは全く武装をしていないので、侵攻自体については全く問題がないと答える。

サイモアは森を滅ぼした後の事は全てヴァリウスに任せると告げた。
自分は姿を消すつもりだが、白子であるという特徴がある以上、長くは逃げ切れないことを自認するサイモア。
それでも、イルヴァに傷跡を残せさえすれば、満足なのだという。



風を聴く者


ようやくラーネイレ一行がヴィンデールに辿り着いた時、既に森からは火の手が上がっていた。
ロミアスに避難誘導を任せ、ラーネイレは、
無駄かもしれないが、少しでも時間を稼ぐためにサイモアと交渉しに行くと言う。
セビリスやヴェセルもラーネイレに同行する。

サイモアを捜すラーネイレの前に現れたのはヴァリウスだった。
皇子の居場所を問うラーネイレに対して、ヴァリウスは
「サイモアはもうここにはおらず、どこへ行ったかは誰も知らない。
作戦の指揮は自分が取っている。自分はいかなる交渉に応じるつもりもない」と言い放った。

それに対してラーネイレは、火を止められないのは仕方ないが、森の外に出たエレアは武器すら持っていないので、
攻撃を止めて欲しいと懇願する。ヴァリウスは交渉はしないと言ったはずだと切り捨てながら、
自分はサイモアと違い、邪魔さえしなければ無駄な血を流すつもりはないという。

そこへ、森の中で煙に巻かれて道に迷った部隊から救援信号が届いたという伝令の兵士がやってくる。
森はまだ生きており危険であるから、その隊を見捨てるよう各部隊へ伝令を送れと命令するヴァリウスだが、
ラーネイレは自分が助けに向かうと告げる。

ヴァリウスに嘲笑され、ヴェセルに制止されながらも、
こんな状況だからこそ、互いに理解できない者同士でも、
憎しみや不信の壁を越える可能性を示すために、行かなければならないと訴えるラーネイレ。
それに対してヴェセルは、ラーネイレが森に入ってしまってはもう守ることが出来ない、
再び自分の胸にエリシェを失ったときのような苦しみを刻むのかと嘆願する。

ラーネイレは、ここで自分がその兵士達を見捨てれば、自分が自分で無くなってしまうと言い、
ヴェセルの愛したエリシェがここにいても同じ選択を採るはずだと告げる。

そして、
「今は傷つき苦しんでいても、いつかは再び白き鷹が飛べる日が来るのを祈っている」と、
ヴェセルに別れを告げ、燃え盛るヴィンデールの森の奥へと駆けて行った。



常闇の眼


レシマスを降り続けた主人公は、三つの魔石で封印された扉を開き、
ついに最深部に辿り着いた。
そこで待ち受けていた、魔導師ゼームと対峙する主人公。
激しい戦いの末、ゼームを打ち倒すことに成功した。

そこへ、常闇の眼の台座から声が響いてきたかと思うと、何者かが目前に出現した。

その者は、主人公がここへ辿り着くことは決定されていた、と語り、
彼らからすれば、それは複雑性の一面に過ぎないが、人間はそれを運命と呼ぶのだと告げる。

見目形は端麗な青年であったが、その気配は明らかに人を超越し、底知れない力と闇を放っている。
その者「混沌の寵児オルフェ」の言葉は続く。

「「ネフィアの永遠の盟約」に基づき、ゼームが守っていたものは、今このときからお前のものとなる」

その視線の先にあるのは絢爛な装飾を施された一冊の書物であり、それこそが「常闇の眼」であった。
オルフェは常闇の眼へと語りかける。
「お前の新しい主人はお前の真価を知らないが、ゼームがしていたような、
たまに本を開いては下界で伝えられている虚飾に満ちた歴史を嘲笑して
自己満足にふける以外の、別の使い方をきっと見つけてくれるだろう」と。

そして主人公に向き直ったオルフェは告げる、
常闇の眼に書かれているのが全て真実の歴史に他ならないこと、
台座から本を離した瞬間全ての魔力は失われ、それ以上新たに記述が刻まれることもない単なる本となること、
本の所有者は偽りの歴史を動かす勢力から命を狙われるであろうこと。
そして、エレアの風を聴く者と出会い、言葉を交じあわせた主人公なら、
常闇の眼がどれほどの意味を持つか理解はせずとも、自分たちを楽しませるような使い方を期待している、
本をレシマスから持ち出すのも、全ては主人公の選択次第であると。


いくばくか後、呆然と佇んでいた主人公が我に返った時、
既にオルフェの姿は無かった。
取り残された主人公は、不安を振り払うと、常闇の眼へと手を伸ばした。






終章




ヴィンデールの森は失われ、人々はサイモアを称えていたが、徐々に世界は変貌していった。
原因不明の病が広まり、作物は枯れ、乾いた風が吹き荒れる。
人々が異変に気付いた頃、ヴァリウスは戦火を生き延びた一人のエレアの女性を証言台へと立たせた。

そして女は語り出した。
ヴィンデールの森がメシェーラをおさえ、イルヴァの自然の均衡を保っていたこと、
森が失われた今、世界は徐々に人の住めない環境へと変貌しつつあることを。

イルヴァの人々はその証言に困惑し、ある者は悲嘆に暮れ、ある者は過ちを悔い、
他の多くの者はいつものように傍観者の態度を取った。

暗い時代の訪れたシエラ・テールだが、ヴァリウスは、まだ希望が残されている事を人々に告げた。
すなわち、サイモアが研究のために造り出した第二の異形の森が存在しているのだという。

ヴィンデールへの攻撃を主導したザナンは分裂し、ヴァリウスが主導する共同体、ロスリアが誕生した。
それは森を育み、国家を超え、星への従事と平和を謳う共同体であり、森へ巡行した者達は病から解放された。
約束の地ロスリアはイルヴァの理想郷となるはずであった。



新たな旅立ち



三年という時の経過は街に賑わいを取り戻し、人々は不安を忘れ、又は忘れたように振る舞っていた。
救いを手にし、多くの人と富を招いたロスリアは腐敗し、諸国の利権に翻弄されるようになっていた。
死に行く世界にあってすら、人々はロスリアの理想の元に結集せず、
諸国の陰謀と思惑、新たなる紛争の気配が大地を覆う。

そんな中、ノースティリスを離れて諸国を渡り歩いていた主人公が、
再び商船の貨物へ紛れ込んでノースティリスへと向かっていた。
それはイルヴァの混迷の影で始まろうとする孤独な旅である。

主人公は常闇の眼の解読に多くの時間を費やした結果、
風を聴く者の戦いを知り、偽りの歴史を知り、
誰にも知られていない謎の時代、「ナーク・ドマーラ」が存在していたことを発見していた。
それは世界に混沌と魔法の力がもたらされた時代であり、ネフィアに隠された謎の鍵を握る時代でもあった。

港町に辿り着いた主人公は懐かしいティリスの風を頬に受けながら歩き出す。
その前途には、ネフィアの永遠の盟約を巡る大いなる試練と冒険が待ち受けている。




【第一部完】




編者補足:

実際のゲーム進行では、プレイヤーがレシマスを探索して行く度に
メインクエストのストーリーが挿入される構成となっており、
主人公の知り得ない部分のストーリーは、「常闇の眼」を手に入れ、
解読した際に観る事が出来た、という設定になっています。
必ずしも時間軸が並行している訳ではありません。

風を聴く者 ラーネイレは、明確に描写されていませんが、
煙に巻かれた兵団を救出する際に、死亡している設定であったそうで、
ヴァリウスが証言台に立たせたエレアの女性は、ラーネイレでは無いとの事です。
ラーネイレの行動が、世界の運命に重要な役割を持っていた、という事は
オルフェの言から明らかですので、ラーネイレに救われた主人公、
もしくは関わった人々が、世界の運命を変える要素となったのかもしれません。

ラーネイレの死亡は非常に曖昧な描写であり、(意図的に曖昧にされたそうです)
ほとんどのプレイヤーが誤解していると思われますので、
noa氏曰く、第二部制作にあたって、ラーネイレを生存させるお話であっても、全く問題は無いと仰っています。
あくまで、当初の設定であったとの事ですので、
こういった結末も存在した、と捉えられるのが良いと思われます。


制作に当たって、下記文章も参考にさせて頂きました。
作者様に感謝の意を表します、ありがとうございました。

ストーリーを教えてもらうスレ暫定Wiki




メインクエストイベント会話全集

メインクエストイベント全文・会話集を掲載致します。
完全なネタバレとなっており、ゲームの楽しみを損なう可能性もございますので、
十分御留意下さい。


  • 最終更新:2013-05-27 11:41:22

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